現在は、抗生物質と細菌が毎日のようにせめぎ合いを行っています。抗生物質に耐性をもった菌もたくさんいて、次々に新しい薬剤が開発されてと、イタチごっこのようになっています。
現在、医療現場で使われている抗生物質には多くの種類があります。それぞれの種類によって、作用が少しずつ違います。
作用を大きく分けると、細菌細胞に対して細胞壁の合成を阻害するタイプ、細胞膜の合成を阻害するタイプ、タンパク質の合成を阻害するタイプ、RNAやDNAの合成を阻害するタ4タイプに分けられます。
細胞壁の合成を阻害するタイプには、βラクタム系、グリコペプチド系などがあります。
タンパク質合成を阻害するタイプには、アミノグリシド系、マクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン系、オキサゾリジノン系、ストレプトグラミン系があります。
DNAやRNAを阻害するタイプには、ニューキノロン系があります。

それぞれの種類、それぞれの薬剤によって、阻害するのが得意な菌があります。得意な菌のことを適応菌と言います。
例えば、βラクタム系にはさらに、ペニシリン系、セファム系、カルパペネル系、モノバクタム系があります。相対的にブドウ球菌や連鎖球菌、腸炎球菌、大腸菌、インフルエンザ菌が適応菌です。
ブドウ球菌による食中毒や、扁桃炎、咽頭炎、しょう紅熱、感染性腸炎、咽頭炎、化膿性皮膚炎、毛嚢炎、髄膜炎など広く使われています。
細菌の中にはβラクタム系薬に耐性を持つものも存在することや、βラクタム系でアナフラキシーなどの強いアレルギー反応を起こすことが時々あることが、要注意点です。
マクロライド系は、マイコプラズマ肺炎や百日咳などの呼吸器疾患に多く用いられます。慢性気管支炎や副鼻腔炎では、少量を長期間使うこともあります。
βラクタム系が無効な細胞内寄生菌にも、マクロライド系が有効なことがよくあります。また、ペニシリン系にアレルギーのある人が、代替えにマクロライド系を用いるケースも多いです。

キノロン系は、クラミジアやサルモネラ菌も適応になっていて、広域に有効です。非定型菌にも有効です。ただし、ウエルシュ菌などの嫌気性菌には弱いという特徴があります。
キノロン系は主に、尿路感染症や腸管の感染症に使われます。腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、細菌性腸炎などが適応です。
それぞれの作用や適応症に合わせて、多くの薬剤の中から最も適するものを医師が選んで処方しています。

抗生物質は感染症には効果的となっている

このように、抗生物質は多くの疾患に使われています。抗生物質を使ったことがないという内科医は、おそらくいないでしょう。
しかし近年は、抗生物質が使われ過ぎている、ということもよく言われています。風邪に抗生物質は必要ない、とよく言われます。
本当に、風邪に抗生物質は必要ないのでしょうか。

人の体というのは、必ずしも教科書通りには行きません。それが人間の体ともいえる所です。風邪から肺炎になるのを予防するために抗生物質を飲んでおくという処方も、間違いとは言いきれません。
風邪でのどが真っ赤になっている時は、風邪と言うよりも咽頭炎と言った方が正解ですが、「のどの風邪でしょう」という言い方をすることもあります。細菌性の胃腸炎でお腹を壊している時に、「お腹の風邪ですね」と説明することもあります。
のどの風邪やお腹の風邪と言われた患者さんの中には、「あの医者は風邪くらいで抗生物質を出して、儲け主義だわ」と、医者を疑ってしまうケースも少なくありません。そして処方された抗生物質を飲まなかったり、途中で飲むのを止めたりしがちです。
しかし7日分出ていた抗生物質を、3日で飲むのを止めてしまうのはNGです。ますます耐性菌を増やしてしまいます。

実は、抗生物質を飲むのを途中で止めてしまうと、生き残った菌がますます力をつけてしまいます。細菌がその薬の耐性を獲得してしまい、ますます耐性菌を増やすことになります。
医薬分業となった今では、薬を出してもたいした儲けにはなりません。下手をするとレセプトが通らず、事情徴収などのややこしいことになるだけです。
抗生物質を処方されたら、症状が治まっても最後までしっかりと飲むことが大切です。また、風邪イコール抗生物質は必要ない、という方程式が必ずしも成立するという訳ではありません。一人一人の症状に応じて、必要であれば投与することもあります。